ジェニファー・ジョーンズ ウィリアム・ホールデン来日
Welcome Jennifer Jones & William Holden

「スクリーン」1955年4月号より




ジェニファー・ジョーンズは羽田空港でのHラインもあざやかなフレンチスタイルのオーバーコートを脱いで、
予想していたよりやせ過ぎな身体をダーク・グレイの半袖ワンピースに包んで、多くを語らず、
「出来たら京マチ子さんにぜひ会って行きたい。何故なら私は「羅生門」「雨月物語」「地獄門」などの
映画を見て、彼女が非常に優れた芸術家だと思ったからです。」という。
貴女の最も好きな役柄は、という質問には、「私は特に好きな役柄といったものはなく、できるだけ変わったものをやって行きたいと思う」
と答えた。
デビュー作品の「聖処女」でアカデミー賞を得た彼女なら当然ながら、ひたすら芸域を深め、拡げて行こうという演技派の面目が
うかがわれる。彼女は家庭にあっても、アメリカ映画界の大立物デヴィッドO・セルズニックのよき伴侶として六年間の堅実な私生活を
送っており、「息子にニコンのレンズを買って帰りたい」というほどの母性愛の持ち主でもある。
語りながらもつとめて笑顔を保とうとしているが、疲労のせいもあってか非常に神経質で気難しい印象が強かった。
「女狐」「終着駅」「悪魔をやっつけろ」などの作品経歴をみても、そんじょそこらの単純な神経ではとても歩けない道だったことが
思い知れる。真ん中で分けたアップのヘア・スタイルが長い首を一層長く見せ、真珠のネックレスがヘイズルの瞳にマッチしている。

ウィリアム・ホールデンは本誌愛読者のよる人気投票で、彼が男優の部で第一位となった旨伝えたが、彼はその喜びを表情に出さず
ペンを取ってファン宛にサインをし、カメラの前でポーズをとってくれた。
疲れ果てている様子がありありと見えて気の毒なほどであった。自分でも「今一番欲しい者は休息だ」と言葉に出して安息を求めた。
 香港には約十日間程滞在し、帰りにはなんとか再び日本に寄りたいと三人は口を揃えて語り、夜中の一時に香港に飛んで行った。



終着駅のジェニファー・ジョーンズ



ジミー・ステュアート夫妻が去って、まだその興奮のさめやらぬ一月三十一日の羽田空港は、香港へのロケーションの途次、
十二時間東京滞在のウィリアム・ホールデン夫妻とジェニファー・ジョーンズを迎えて、またまたにぎやかな歓迎陣がくりひろげられた。
すでに四回も日本の地を踏んだ事のあるホールデンは、ハリウッドのスターの中でも一番の日本通であり、日本びいきです。
ジェニファー・ジョーンズもこれで二度目の訪日です。
 例の温和な顔いっぱいを笑いでほころばせたホールデンが、優雅で優しい夫人ブレンダ・マーシャルの手を取って機から降りて来た後、
ジェニファー・ジョーンズは、地味なツイードの外套に身を包んで姿を見せました。
「女狐」や「ルビイ」の、あの強烈な個性のジェニファーを見慣れた者には、ちょっと気がつかぬほど目立たない姿ですが、
さすがに人とは違った底光りのするような雰囲気が、その身体から発散されていました。
 記者とのインタビューに、ジェニファーは濃い緑色のワンピースに真珠の首飾りと耳飾りだけの、単純でいながら実に垢抜けのした姿を見せ、
第一線スターであり、大プロデューサー、セルズニック夫人としての貫禄を見せました。
ロケからの帰路には是非日本でゆっくりしたい、その時出来たら「地獄門」で見た日本のスター、京マチ子さんに逢いたいという言葉を
残して、その深夜の便で再び彼女はホールデン夫妻と香港へ旅だって行きました。

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